建設業経理士2級:一連の流れを知るの巻
今週金曜日(11月15日)より、第27回建設業経理検定試験の申し込み受付が始まります。
受験を考えておられる方は、うっかり忘れないようにお気をつけください。
さて当ブログでは、これの2級を受験される方向けに、ワンポイント講座を綴ってまいりたいと思います。
第1回目の本日は、「一連の流れを知る」です。
簿記の基本。全体の流れを知る。
「簿記」という一連の手続きを学ぶ上で、個々の詳細を知る前に、全体の流れを知っておくことは非常に重要です。
これは、建設業経理士だけでなく、日商簿記などの全ての簿記試験における鉄則とも言えるものです。
まずは、以下の流れを押さえておきましょう。
< 日々の業務 >
①取引発生
②仕訳して「仕訳帳」に記録
③「仕訳帳」から「総勘定元帳」に転記
< 月末にすること >
④「試算表」を作成し、記録に誤りがないかチェックする
< 期末(決算)にすること >
⑤決算整理事項を処理し、「精算表」を作成する
⑥「貸借対照表」「損益計算書」を作成する
⑦帳簿を締め切り、次期に繰り越す
以上が基本的な簿記の流れです。
これに加えて、建設業経理士(工業簿記)の場合は、日々の業務として「材料元帳」を作成することや、月末の業務として「部門費振替表」や「工事原価報告書」などを作成することになります。
では、それぞれについて簡単に説明してまいりましょう。
①取引発生
一般的な「取引」が意味する事柄と、簿記上の「取引」とは少し意味が違っています。
簿記で扱う「取引」とは、あくまでも、「資産、負債、純資産(資本)のいずれかが、増減する取引」のことです。
したがって、「契約書にサインした」という行動は一般的には「取引」と言われるものですが、簿記的には「取引」ではありません。
しかし、「契約書にサインし、手付金として現金100円を支払った。」となると、『現金』という資産が減っていますので、簿記上の取引となり、
前渡金 100 / 現金 100
と仕訳され、帳簿に記録されることになります。
②仕訳して「仕訳帳」に記録
仕訳については、当ブログの「これで完璧!仕訳のいろは。」をご覧ください。
③「仕訳帳」から「総勘定元帳」に転記
日々の取引は仕訳され、「仕訳帳」に記録されます。
これは、取引を日付順にまとめたものです。
しかしこのままでは、決算時にうまく集計できないので、勘定科目別に集計しなおす必要があります。
この、「勘定科目別の集計」を記録するものが「総勘定元帳」というわけですね。
「仕訳帳」に記録された日付毎の記録を、「総勘定元帳」へと勘定科目別に書き写す。
この作業を「転記」といいます。
こうすることによって、決算時に損益を計算することができるわけです。
④「試算表」を作成し、記録に誤りがないかチェックする
「転記」は、ミスしやすい作業です。
そこで間違いがないかチェックするために「試算表」が作られます。
試算表には、「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」と3種類あります。
日商簿記3級では、これを作成する問題が出題されます。
建設業経理士2級では、試算表を与えられたうえで、貸借対照表と損益計算書を作成する問題が出題されます。
⑤決算整理事項を処理し、「精算表」を作成する
建設業経理士2級の試験で最も重要なポイントとなるのが、ここです。
毎回必ず、この問題が出題されます。
「精算表」を作るときにミスしやすいのが、借方と貸方を書き間違えることです。
決算整理事項について、正確な仕訳をしたにもかかわらず、何故か貸借の数字が一致せず、仕訳が間違っているのかと不安になることがあります。
もちろんその場合もありますが、うっかりしやすいのが、単なる書き間違いです。
対策としても「注意しましょう」というしかないのですが、繰り返し過去問を解くなどして、精算表そのものに慣れておくことは絶対に必要です。
簿記学習の鉄則は、「習うより慣れよ」です。
⑥「貸借対照表」「損益計算書」を作成する
精算表が正確に作成できれば、おのずと「貸借対照表」「損益計算書」も正確に仕上がります。
しかしここでも、「書き間違い」のミスには注意が必要です。
⑦帳簿を締め切り、次期に繰り越す
ちょっと思い出して頂きたいのですが、勘定科目には5つの種類がありました。
資産、負債、純資産(資本)、費用、収益の5つですね。
このうち、費用と収益は、損益計算書に記載されるものです。
そして、損益計算書は、「一定期間における損益をあらわす」ものでした。
「一定期間」とは、1つの会計期間ということですから、言い換えれば、「期末において、当期の損益をあらわす」のが損益計算書ということです。
何が言いたいかというと、「損益計算書は、期が代わるたびにゼロクリアしなければならない。」ということです。
あくまでも、「当期の」損益ですから、前期の数字が残っていてはいけないのです。
新しく期首を迎えた時、費用と収益はゼロからスタートしなければならないのです。
一方、貸借対照表は、「ある時点における財政状態をあらわす」ものです。
資産、負債、純資産(資本)といった数字は、開業してから廃業するまで、ずっと繋がった数字でなければなりません。
どこかでゼロクリアしてはいけないのです。
したがって、
- 損益計算書に記載される費用、収益について
→ 期末にゼロクリアする作業が必要
- 貸借対照表に記載される資産、負債、純資産(資本)について
→ 期末の数字を翌期首に繰り越す作業が必要
ということになります。
これらの作業のことを、「帳簿の締め切り」というわけですね。
帳簿を締め切り、期首を迎えたら、また①から日々の業務に戻ります。
簿記を学習する際には、こうした流れを意識するようにしましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。