建設業経理士2級の試験では、原価計算に関する理論的な部分を問う問題が必ず1つ出題されます。
公式ホームページで公開されている過去問(第9回~第26回)を調べてみると、その出題パターンは下記の5つでした。
- タイプA:個別原価計算、総合原価計算など、「原価計算の種類」を問う問題。
- タイプB:原価は、( )の消費である。など文章の穴埋で「原価の定義」を問う問題。
- タイプC:ある事柄について、工事原価として処理するものか、非原価項目として処理するのかなど、「原価の区分」を問う問題。
- タイプD:発生形態別分類、作業機能別分類など、「原価の基礎的分類基準」を問う問題。
- タイプE:ある事柄について、原価計算制度であるか、特殊原価調査であるかを問う問題。
そして、出題回数の内訳は、以下の表のとおりです。
出題傾向に目立った偏りもなさそうなので、次の出題予想は難しそうです。
ただ、今までにない全く新しい問題が出るとも考えにくいので、やはりこの5タイプの攻略法を知っておくことが重要に思います。
それでは、各タイプについて、それぞれの攻略法を綴ってまいりましょう。
タイプAの攻略法
タイプAは、「原価計算の種類」を問う問題です。
「原価計算の種類」とは、
などがあり、与えられた文章がどれに当てはまるかを解答しなければなりません。
それぞれの特徴を把握しましょう。
総原価計算
営業活動によって発生した費用は、まず、「原価」として認められるものかどうか?で分類されます。
そして、「原価」として認められたものは、さらに、「工事原価」なのか「販売費及び一般管理費」なのか分類されます。
つまり、発生した全ての費用は、
- 工事原価(工事に関わる費用。プロダクト・コストともいいます。)
- 販売費及び一般管理費(営業に関わる費用。ピリオド・コストともいいます。)
- 非原価項目
の3つに分類されるわけです。
このうち、「工事原価」と「販売費及び一般管理費」をまとめて計算するのが、「総原価計算」です。
総原価 = 工事原価 + 販売費及び一般管理費
原価として認められたものを、全部まとめて計算するのが「総原価計算」です。
総合原価計算と個別原価計算
総合原価計算は、総原価計算と間違えやすいのですが、実は、「個別原価計算」と対をなすものです。
まとめて大量に生産されるため、個々に原価を把握することが難しいもの(例えばネジとかボルトとかナルトとか)について、発生した原価を生産量で割ることにより1つ当たりの原価を求めるのが、総合原価計算です。
また、「まとめて大量に生産」するためには、工程の始点で材料を投入し、これに加工をくわえて仕上げるのが一般的です。
このため、原価計算をするにあたり、材料費などの直接費と、加工費(間接費)を分けて計算するのも、総合原価計算の特徴といえます。
対して、1つ1つの製品(工事現場)毎に、それぞれの原価を計算するのが、個別原価計算です。
言うまでもなく、建設業では、個別原価計算が一般的です。
標準原価計算
標準原価計算とは、「標準原価」を使って計算する方法のことをいいます。
「標準原価」とは、予め定められた目標となる数値ですね。
例えば、ネジを大量生産することを考えてみましょう。
これは、かかった費用を生産量で割るのですから、全ての製品が仕上がってからじゃないと計算ができません。
しかしそれだと何かと困る。もっと早く原価計算をしたい。
そこで、予め費用を見積り、目標を定め、「標準原価」を設定して、原価計算を行うのです。
こうすることでスピーディに原価計算を行い、後から実際との差額を計上するわけです。
形態別原価計算
形態別原価計算とは、発生した工事原価を、材料費、労務費、外注費、経費に分類して計算する方法のことです。
完成工事原価報告書を作成するなど、工事毎に原価の内訳を求める計算がこれに当たります。
事前原価計算
事前原価計算とは、工事を請け負う前に計算される見積原価計算や予算原価計算のことをいいます。
工事を始める前の計算なので、「事前」原価計算ですね。
例題
次の各文章について、最も関係の深い「原価計算の種類」を答えなさい。
- 建設業では、一般的に工事原価を材料費、労務費、外注費、経費に分類して計算する。
- 工事に直接関わる費用だけでなく、営業活動に係る費用まで含めたものが、いわゆる「原価」である。
- コストコントロールのためには、予め目標を定めておくことが有効である。
- 建設資材の製造工場においては、素材の仕入れに係る費用と、その加工に係る費用とを区分して原価計算を行う。
解答
今回はここまで。
続きはまた明日。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。