建設業経理士2級の試験では、毎回必ず精算表を作成する問題が出題されます。
配点も大きく、合格のためには落とせないところですが、この問題のポイントは、
- 決算整理事項を正しく仕訳すること
- 金額を記載する場所に気をつけること
の2点です。
今日からしばらく、「精算表対策」と題してアップしてまいりますので、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
では、今日の問題はこちら。
<問題>
下記の<決算整理事項>について、その仕訳を示すとともに、仕訳に使用した勘定科目のホームポジションも答えなさい。
なお、工事原価は未成工事支出金を経由して処理する方法によっており、会計期間は1年である。
<決算整理事項>
(1)期末の受取手形借方残高¥415,000に、不渡手形¥130,000が含まれている。このため、必要な振替を行うとともに手形額面の90%につき貸倒引当金を計上する。
(2)(1)を除き、貸倒引当金については売上債権の期末残高の2%を差額補充法で計上する。なお、期末の受取手形借方残高は¥415,000、完成工事未収入金の借方残高は¥625,000、貸倒引当金の貸方残高は¥15,000である。
(3)減価償却費①工事用:機械装置について¥67,500。ただし、月次で¥5,000の減価償却費を毎月計上しており、当期の予定計上額と実際発生額の差額を当期の工事原価(未成工事支出金)に加減する。②一般管理用:備品(期末借方残高¥140,000、定額法、耐用年数8年、残存価額ゼロ)
(4)新築中の倉庫(取得原価¥195,000)が完成したので、本勘定に振り替える。また、仮払金の期末残高¥1,400は、当該倉庫完成に伴う登記費用である。なお、同倉庫は翌期首から使用するものである。
(5)退職給付引当金の当期繰入額は、本部事務員について¥17,500、現場作業員について¥70,000である。ただし、現場作業員については、月次で¥5,500の退職給付引当金繰入額を毎月計上しており、当期の予定計上額と実際発生額の差額を当期の工事原価(未成工事支出金)に加減する。
(6)完成した工事に対する外注費¥60,000が未払いであった。これについては、完成工事原価に加減する。
(7)完成工事高¥2,815,000に対して0.1%の完成工事補償引当金を差額補充法で計上する。なお、完成工事補償引当金の期末残高は¥3,900である。
(8)未成工事支出金の期末残高は¥280,500であったが、上記の各調整を行った後、次期繰越額は¥290,000となった。残額を完成工事原価に振り替える。
(9)販売費及び一般管理費の期末残高には、本社事務所の前払保険料¥4,250が含まれており、他方、営業所経費の未払分¥3,150がある。
(10)上記の決算整理事項により、税引前当期純利益¥295,735を計上した。当期の法人税、住民税及び事業税として税引前当期純利益の40%を計上する。
<解答と解説>
(1)
不渡手形(BS借方)130,000 / 受取手形(BS借方)130,000
販売費及び一般管理費(PL借方)117,000 / 貸倒引当金(BS貸方)117,000
( )内はそれぞれのホームポジションを表し、BSは貸借対照表、PLは損益計算書を表しています。
まず、受取手形から不渡手形へと、該当額を振り替えます。
次に、このうち90%の貸倒引当金を計上するということなので、
¥130,000 × 90% = ¥117,000 の貸倒引当金を計上します。
問題によっては、『販売費及び一般管理費』ではなく、『貸倒引当金繰入額』で仕訳する場合もあります。
どちらを使うかは、解答用紙を見て、精算表の勘定科目欄に『貸倒引当金繰入額』があればこれを使い、無ければ『販売費及び一般管理費』で仕訳すると判断しましょう。
(2)
販売費及び一般管理費(PL借方)3,200 / 貸倒引当金(BS貸方)3,200
売上債権の期末残高
= 受取手形の残高 + 完成工事未収入金の残高
= ¥415,000 - (1)の仕訳より¥130,000 + ¥625,000
= ¥910,000
貸倒引当金計上額 = ¥910,000 × 2%
= ¥18,200
貸倒引当金にはすでに¥15,000あって、これを¥18,200にするわけですから、差額の¥3,200を繰り入れます。
(1)と同じく、『販売費及び一般管理費』ではなく、『貸倒引当金繰入額』で仕訳する場合もありますので注意しましょう。
(3)
未成工事支出金(BS借方)7,500 / 機械装置減価償却累計額(BS貸方)7,500
販売費及び一般管理費(PL借方)17,500 / 備品減価償却累計額(BS貸方)17,500
機械装置について。
月次で¥5,000を計上しているということは、すでに、
¥5,000 × 12ヶ月 = ¥60,000 が計上されているということです。
実際には、¥67,500を計上するということなので、差額の¥7,500を追加で計上します。
備品について。
減価償却費 = (期末残高-残存価額)÷耐用年数
= ¥140,000 ÷ 8年
= ¥17,500
(4)
建物(BS借方)196,400 / 建設仮勘定 195,000
/ 仮払金 1,400
建物が完成したので、建設仮勘定から建物へと振り替えます。
さらに、仮払金がこれに伴う費用ということなので、建物の取得原価に含めます。
『建設仮勘定』と『仮払金』は、整理仕訳後には残高がゼロになり、BSやPLには記載されないことに注意しましょう。
もし、残高があれば、どこかを間違えています。
(5)
販売費及び一般管理費(PL借方)17,500 / 退職給付引当金(BS貸方)17,500
未成工事支出金(BS借方)4,000 / 退職給付引当金(BS貸方)4,000
本部事務員については、そのまんまです。
現場作業員について。
月次で¥5,500を計上しているということは、すでに、
¥5,500 × 12ヶ月 = ¥66,000 が計上されているということです。
実際には、¥70,000を計上するということなので、差額の¥4,000を追加で計上します。
問題によっては、『販売費及び一般管理費』や『未成工事支出金』ではなく、『退職給付費用』を使う場合もありますので注意しましょう。
(6)
完成工事原価(PL借方)60,000 / 工事未払金(BS貸方)60,000
(7)
完成工事補償引当金(BS貸方)1,085 / 未成工事支出金(BS借方)1,085
完成工事補償引当金計上額 = ¥2,815,000 × 0.1%
= ¥2,815
完成工事補償引当金として¥2,815を計上したいのに、残高が¥3,900もある。
なので、差額の¥1,085を戻し入れます。
(8)
完成工事原価(PL借方)915 / 未成工事支出金(BS借方)915
未成工事支出金の借方合計
= 期末残高¥280,500 + (3)より¥7,500 + (5)より¥4,000
= ¥292,000
未成工事支出金の貸方合計¥292,000
= 完成工事原価振替額 + (7)より¥1,085 + 次期繰越額¥290,000
完成工事原価振替額 = ¥915
(9)
前払保険料(BS借方)4,250 / 販売費及び一般管理費(PL借方)4,250
販売費及び一般管理費(PL借方)3,150 / 未払金(BS貸方)3,150
まず、販売費及び一般管理費より、該当額を前払保険料に振り替えます。
次に、未払金¥3,150があったということなので、これを販売費及び一般管理費に組み入れます。
(10)
法人税、住民税及び事業税(PL借方)118,294 / 未払法人税等(BS貸方)118,294
法人税、住民税及び事業税の計上額 = 税引前当期純利益 × 40%
= ¥295,735 × 40%
= ¥118,294
税額を計上しただけで、まだ実際には支払っていませんので、『未払法人税等』で処理します。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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