建設業経理士2級:精算表対策その5
今日の問題はこちら。
<問題>
下記の<決算整理事項>について、その仕訳を示すとともに、仕訳に使用した勘定科目のホームポジションも答えなさい。
なお、工事原価は未成工事支出金を経由して処理する方法によっており、会計期間は1年である。
<決算整理事項>
(1)当座預金について、帳簿残高は¥141,500となっているが、期末残高証明書を入手したところ、その残高は¥242,500であった。差額原因は、調査したところ以下のとおりであった。
①会社が契約している本社役員の当期の保険料¥19,000が引き落とされていたが、未処理であった。
②完成工事の工事代金¥120,000が期末に振り込まれていたが、発注者より連絡を受けていなかったため、未記帳であった。
(2)長期保有目的の株式の時価が著しく下落しており、¥102,500の評価損を計上する。
(3)売上債権の期末残高の2%について、差額補充法で貸倒引当金を計上する。なお、受取手形の期末残高は¥361,500、完成工事未収入金の期末残高は¥319,000であり、貸倒引当金の期末残高が¥9,000ある。
(4)期末材料の棚卸減耗¥3,900が発生した。全額工事原価として処理する。
(5)仮払金¥9,000は、本社従業員の出張旅費の仮払いであった。当該仮払金は旅費交通費に振り替える。
(6)減価償却費
①工事用:機械装置の当期の減価償却費は¥53,250である。ただし、月次で¥4,400の減価償却費を予定計上しており、当期の予定計上額と実際発生額の差額を当期の工事原価(未成工事支出金)に加減する。
②一般管理部門用:備品(取得原価¥140,000、定額法、耐用年数5年、残存価額ゼロ)
(7)退職給付引当金の当期繰入額は、本部事務員について¥34,000、現場作業員について¥76,000である。ただし、現場作業員については月次で¥6,250の退職給付引当金繰入額を予定計上しており、当期の予定計上額と実際発生額の差額を当期の工事原価(未成工事支出金)に加減する。
(8)完成工事高¥2,975,000に対して0.1%の工事補償引当金を差額補充法で計上する。なお、完成工事補償引当金の期末残高は¥1,930である。
(9)未成工事支出金の期末残高は¥188,500であったが、上記の各調整を行った後、未成工事支出金の次期繰越額は¥192,500となった。残額を完成工事原価に振り替える。
(10)上記の決算整理事項により、税引前当期純利益¥76,735を計上した。当期の法人税、住民税及び事業税として税引前当期純利益の40%を計上する。
<解答と解説>
(1)
支払保険料(PL借方)19,000 / 当座預金(BS借方)19,000
当座預金(BS借方)120,000 / 完成工事未収入金(BS借方)120,000
( )内はそれぞれのホームポジションを表し、BSは貸借対照表、PLは損益計算書を表しています。
与えられた精算表に、『支払保険料』がない場合は、『販売費及び一般管理費』で処理します。
(2)
投資有価証券評価損(PL借方)102,500 / 投資有価証券(BS借方)102,500
(3)
販売費及び一般管理費(PL借方)2,210 / 貸倒引当金(BS貸方)2,210
(1)より、
完成工事未収入金の残高 = ¥319,000 - ¥120,000 = ¥199,000
従って、
売上債権の額 = ¥361,500 + ¥199,000 = ¥560,500
貸倒引当金計上額 = 売上債権の2%
= ¥560,500 × 2%
= ¥11,210
貸倒引当金の期末残高が¥9,000あるので、差額の¥2,210を追加計上します。
(4)
未成工事支出金(BS借方)3,900 / 材料貯蔵品(BS借方)3,900
(5)
旅費交通費(PL借方)9,000 / 仮払金 9,000
与えられた精算表に、『旅費交通費』がない場合は、『販売費及び一般管理費』で処理します。
また、『仮払金』は、決算時には必ず残額を¥0にします。
もし決算整理をした後にまだ残っていたら、どこかを間違えているということです。
注意しましょう。
(6)
未成工事支出金(BS借方)450 / 機械装置減価償却累計額(BS貸方)450
販売費及び一般管理費(PL借方)28,000 / 備品減価償却累計額(BS貸方)28,000
機械装置について。
月次で¥4,400を計上しているということは、すでに、
¥4,400 × 12ヶ月 = ¥52,800 が計上されているということです。
実際には、¥53,250を計上するということなので、差額の¥450を追加で計上します。
備品について。
減価償却費 = (取得原価-残存価額)÷耐用年数
= ¥140,000 ÷ 5年
= ¥28,000
(7)
販売費及び一般管理費(PL借方)34,000 / 退職給付引当金(BS貸方)34,000
未成工事支出金(BS借方)1,000 / 退職給付引当金(BS貸方)1,000
本部事務員については、そのまんまです。
現場作業員について。
月次で¥6,250を計上しているということは、すでに、
¥6,250 × 12ヶ月 = ¥75,000 が計上されているということです。
実際には、¥76,000を計上するということなので、差額の¥1,000を追加で計上します。
(8)
未成工事支出金(BS借方)1,045 / 完成工事補償引当金(BS貸方)1,045
完成工事補償引当金計上額 = ¥2,975,000 × 0.1%
= ¥2,975
完成工事補償引当金として¥2,975を計上したい。残高は¥1,930である。
なので、差額の¥1,045を追加計上します。
(9)
完成工事原価(PL借方)2,395 / 未成工事支出金(BS借方)2,395
未成工事支出金の借方合計
= 期末残高¥188,500+(4)より¥3,900+(6)より¥450+(7)より¥1,000+(8)より¥1,045
= ¥194,895
未成工事支出金の貸方合計¥194,895
= 完成工事原価振替額 + 次期繰越額¥192,500
完成工事原価振替額 = ¥2,395
(10)
法人税、住民税及び事業税(PL借方)30,694 / 未払法人税等(BS貸方)30,694
法人税、住民税及び事業税の計上額 = 税引前当期純利益 × 40%
= ¥76,735 × 40%
= ¥30,694
税額を計上しただけで、まだ実際には支払っていませんので、『未払法人税等』で処理します。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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