簿記を学ぶうえで、最も重要なことの1つが、「仕訳」をマスターすることです。
その重要性たるや、
「仕訳を制する者は、簿記を制する。」
なんて言われるくらいです。
そんな「仕訳」を学ぶときに、まず覚える必要があるのが、「借方」「貸方」という言葉です。
この言葉、どっちがどっちだったかと、なかなか覚えにくいところがあるので、ちょっと詳しく解説してみようと思います。
そもそも、「仕訳」とは?
「仕訳」とは、いわゆる「簿記上の取引」を、正確に記録するためのルールです。
その特徴は、「1つの取引を左右2つに分解して記録する。」というところにあります。
例えば、「現金100円を借りた。」という取引なら、
① お金を借りたので、現金が100円増えた。
② お金を借りたので、借金が100円増えた。
と分解し、
①は『現金』という資産が増えたので、左側に書き、
②は『借入金』という負債が増えたので、右側に書く。
したがって、この取引の仕訳は、
現金 100 / 借入金 100
となるわけです。
この左右について、左側を「借方」、右側を「貸方」と呼ぶわけですね。
ん?「貸方」に『借入金』??
そうなんです。
ここらへんがちょっと、とっつきにくいところなんですよね。
なんで、左側を「借方」と呼ぶのか?
なんで、右側を「貸方」と呼ぶのか?
なんで、「貸」と呼んでる方に、『借』をつく言葉が入っているのか?
『借入金』なら、「借方」じゃないの??
これらの謎を解くカギは、なんとイタリアにありました。
複式簿記発祥の地、イタリア。
「単式簿記」は、1つの取引について、1つの記録をします。
前述の「現金100円を借りた。」という取引なら、
お金を100円借りた。
と記録する。
これが「単式簿記」です。
「単式簿記」というより、ただのメモみたいなものですね。
このように「取引を記録する」という行為自体は紀元前からあったようですが、当然、こうした記録方法には共通したルールなどなく、世の中の経済が発達してくるにつれ、なにかと不便が生じてきます。
そこで14世紀~15世紀くらいのイタリアにて誕生したのが、「取引を仕訳によって記録する」という「複式簿記」なのです。
なぜ「貸方」に『借入金』なのか?
さて、この謎です。
結論から言えば、イタリア語と日本語の違いと言えそうです。
複式簿記が誕生した中世イタリアでは、
- 自分からお金を借りている人を、左側に書く。
- 自分にお金を貸してくれている人を、右側に書く。
というルールがありました。
ここから、左側を「借方」、右側を「貸方」と呼ぶようになったのです。
しかし日本語で考えてみると、
「自分からお金を借りている人」は、「自分がお金を貸した人」。
「自分にお金を貸してくれている人」は、「自分がお金を借りた人」。
と言った方が自然ですよね。
ここから、
「自分がお金を貸した人」→『貸付金』
「自分がお金を借りた人」→『借入金』
という勘定科目が生まれたのです。
これにより、
『貸付金』(貸したお金)は、「借方」(左側)に書く。
『借入金』(借りたお金)は、「貸方」(右側)に書く。
ということになっちゃったんですね。
もっと分かりやすい覚え方
とはいえ、これらの話は単なる雑学に過ぎません。
「借方」「貸方」、どっちがどっちか、もっと分かりやすい覚え方はないでしょうか?
はい。こういうふうに覚えましょう。
「借方」は、「かりかた」と読みます。
「貸方」は、「かしかた」と読みます。
仕訳をしたとき、左側が「かりかた」、右側が「かしかた」です。
読み方の2文字目に注目です。
「かりかた」の「り」は、左に流れてますので、「借方」は左側。
「かしかた」の「し」は、右に流れてますので、「貸方」は右側。
これでもう、どっちがどっちか、迷うことはありませんね!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。