建設業経理士2級の第5問、精算表の問題で一番怖いのは、うっかりミスでパニックになってしまうことです。
問題そのものは、毎回同じような問題が出ていますので、しっかり過去問を解いていれば正答できると思います。
しかし。
仕訳は完璧なハズなのに、最後に貸借が合わない。
これが怖いんですよね。
そんな時は落ち着いて、仕訳をもう一度チェックしてみましょう。
これが間違っていたら話になりません。
- 繰入・戻入で、借方・貸方を間違えていないか?
- 計算機のタイプミスで、金額を間違えていないか?
- 金額を記入するときに、一桁ズレて記入していないか?
- 縦の合計をするときに、どこか抜けているところはないか?
変に焦って、「正解してるのに間違ってた」なんてことにならないよう、気をつけましょう。
それでは、今日の問題はこちら。
<問題>
下記の<決算整理事項>について、その仕訳を示すとともに、仕訳に使用した勘定科目のホームポジションも答えなさい。
なお、工事原価は未成工事支出金を経由して処理する方法によっており、会計期間は1年である。
<決算整理事項>
(1)材料貯蔵品の期末実地棚卸により判明した棚卸減耗¥1,600を、工事原価に算入する。
(2)仮払金の期末残高¥23,100は、以下の内容であることが判明した。
①¥2,600は、過年度の完成工事に関する補修費である。なお、完成工事補償引当金の期末残高は¥3,250である。
②¥20,500は、法人税等の中間納付額である。
(3)減価償却については、以下のとおりである。なお、当期中に固定資産の増減取引は発生していない。
①機械装置(工事現場用)実際発生額¥31,000なお、月次原価計算において、月額¥2,500を未成工事支出金に予定計上している。当期の予定計上額と実際発生額との差額は当期の工事原価(未成工事支出金)に加減する。
②備品(本社用)以下の事項により減価償却費を計上する。取得原価¥32,000、残存価額ゼロ、耐用年数8年、減価償却方法 定率法(償却率0.250)。なお、備品減価償却累計額の期末残高は¥14,000である。
(4)仮受金の期末残高¥20,000は、前期に完成した工事の未収代金の回収分であることが判明した。
(5)売上債権の期末残高に対して、2%の貸倒引当金を差額補充法で計上する。なお、期末の受取手形借方残高は¥305,000、完成工事未収入金の借方残高は¥477,500、貸倒引当金の貸方残高は¥14,600である。
(6)退職給付引当金の当期繰入額は、本社事務職員について¥12,500、現場作業員について¥19,250である。ただし、現場作業員については月次原価計算において、月額¥1,650の退職給付引当金繰入額を未成工事支出金に予定計上しており、当期の予定計上額と実際発生額の差額を当期の工事原価(未成工事支出金)に加減する。
(7)完成工事に係る仮設撤去費の未払分¥1,100を計上する。
(8)完成工事高¥1,375,000に対して0.2%の完成工事補償引当金を差額補充法で計上する。なお、完成工事補償引当金の期末残高は¥3,250である。
(9)販売費及び一般管理費の中には、本社家賃の前払分¥700が含まれていた。
(10)未成工事支出金の期末残高は¥432,000であったが、上記の各調整を行った後、次期繰越額は¥436,000となった。残額を完成工事原価に振り替える。
(11)上記の決算整理事項により、税引前当期純利益¥217,000を計上した。当期の法人税、住民税及び事業税として税引前当期純利益の40%を計上する。
<解答と解説>
(1)
未成工事支出金(BS借方)1,600 / 材料貯蔵品(BS借方)1,600
(2)
完成工事補償引当金(BS貸方)2,600 / 仮払金 2,600
仮払法人税等 20,500 / 仮払金 20,500
①について。
「過年度の完成工事に関する補修費」は、『完成工事補償引当金』で処理します。
ですが、与えられた精算表に『完成工事補償引当金』がない場合は、『修繕維持費』や『工事補償費』などの勘定科目を使用する場合もあります。
本試験では、与えられた精算表をよく見て、適切な勘定科目を使用しましょう。
②について。
精算表に『仮払法人税等』が無い場合は、(11)で計上される『法人税、住民税及び事業税』と直接仕訳します。
(3)
未成工事支出金(BS借方)1,000 / 機械装置減価償却累計額(BS貸方)1,000
販売費及び一般管理費(PL借方)4,500 / 備品減価償却累計額(BS貸方)4,500
機械装置について。
月次で¥2,500を計上しているということは、すでに、
¥2,500 × 12ヶ月 = ¥30,000 が計上されているということです。
実際には、¥31,000を計上するということなので、差額の¥1,000を追加計上します。
備品について。
減価償却費 = (取得原価-原価償却累計額)×償却率
= (¥32,000-¥14,000)×0.25
= ¥4,500
(4)
仮受金 20,000 / 完成工事未収入金(BS借方)20,000
決算整理をした後は、『仮払金』『仮受金』は必ずゼロになります。
もし残高があったら、どこかを間違えているということですので、注意しましょう。
(5)
貸倒引当金繰入額(PL借方)650 / 貸倒引当金(BS貸方)650
売上債権の期末残高
= 受取手形の残高 + 完成工事未収入金の残高
= ¥305,000 + ¥477,500 - (4)より¥20,000
= ¥762,500
貸倒引当金計上額 = ¥762,500 × 2%
= ¥15,250
貸倒引当金にはすでに¥14,600あって、これを¥15,250にするわけですから、差額の¥650を追加計上します。
なお、『貸倒引当金繰入額』は、『販売費及び一般管理費』で処理する場合もあります。
与えられた精算表をよく見て、適切な勘定科目を使用しましょう。
(6)
販売費及び一般管理費(PL借方)12,500 / 退職給付引当金(BS貸方)12,500
退職給付引当金(BS貸方)550 / 未成工事支出金(BS借方)550
本社事務員については、そのまんまです。
現場作業員について。
月次で¥1,650を計上しているということは、すでに、
¥1,650 × 12ヶ月 = ¥19,800 が計上されているということです。
実際には、¥19,250を計上するということなので、差額の¥550を戻し入れます。
(7)
未成工事支出金(BS借方)1,100 / 工事未払金(BS貸方)1,100
「完成工事に係る」ものを、『未成工事支出金』で仕訳することに、ちょっと違和感を覚えるかもしれません。
しかし、「完成していようがいまいが、工事に係る全ての原価は、『未成工事支出金』に集計された後、『完成工事原価』に振り替えられる。」と考えれば、すっきりするのではないでしょうか。
(8)
未成工事支出金(BS借方)2,100 / 完成工事補償引当金(BS貸方)2,100
完成工事補償引当金計上額 = ¥1,375,000 × 0.2%
= ¥2,750
完成工事補償引当金の残高 = 期末残高¥3,250 - (2)より¥2,600
= ¥650
完成工事補償引当金として¥2,750を計上したい。残高は¥650である。
なので、差額の¥2,100を追加計上します。
(9)
前払家賃(BS借方)700 / 販売費及び一般管理費(PL借方)700
『前払家賃』は、『前払費用』で処理する場合もありますので、注意しましょう。
(10)
完成工事原価(PL借方)1,250 / 未成工事支出金(BS借方)1,250
未成工事支出金の借方合計
= 期末残高¥432,000+(1)より¥1,600+(3)より¥1,000+(7)より¥1,100+(8)より¥2,100
= ¥437,800
未成工事支出金の貸方合計¥437,800
= 完成工事原価振替額 + (6)より¥550 + 次期繰越額¥436,000
完成工事原価振替額 = ¥1,250
(11)
法人税、住民税及び事業税(PL借方)86,800 / 仮払法人税等 20,500
/ 未払法人税等(BS貸方)66,300
法人税、住民税及び事業税の計上額 = 税引前当期純利益 × 40%
= ¥217,000 × 40%
= ¥86,800
(2)で『仮払法人税等』を計上していない場合は、
法人税、住民税及び事業税 86,800 / 仮払金 20,500
/ 未払法人税等 66,300
と仕訳します。
どちらにしても、『法人税、住民税及び事業税』と『未払法人税等』の額が変わらないことと、『仮払金』『仮払法人税等』は消えることに注意しましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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